医薬品・医療機器・食品工場対象
時間 | 内容 | 講師 | |
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1 | 13:00~14:10 | 医薬品工場における昆虫管理の概念 ~生態学的アプローチの重要性~ |
谷 壽一 |
2 | 14:10~15:20 | レスケミカルを実現するための組織運用と昆虫管理教育 | 伊藤 壽康 |
3 | 15:35~16:45 | レスケミカルによる昆虫制御技法 | 伊藤 壽康(東京) 岡本 美佐子(大阪) |
昆虫の管理は自主管理が基本である。まず、妥当性のある防虫計画を立てることが重要である。しかし防虫管理の計画が、モニタリングと殺虫剤散布だけであることもある。
医薬品工場における昆虫管理で最も大切なことは、昆虫が発生したときに個体群生態学に基づくアプローチによる防除計画が可能かどうかということである。昆虫相調査や定期的なモニタリングの結果は、あくまでその時点でそこに昆虫類が生息していたという事実を示すだけであり、本来知りたい情報は混入などのリスクがあるのかということである。つまり昆虫が捕獲されたときにはその後の後追い調査が重要であり、その個体がどこから、どのような状況で、どのような要因によって捕獲されたのかということを追究してこそ、生態学的なアプローチによる防除計画の作成が可能となる。
防除に当たっては、食物連鎖やその種の生活史を十分把握したうえで実行しなければ効果を得ることはできない。医薬品の製造環境では昆虫相は単純で塵埃中の有機物や真菌を食べているものとその捕食者で構成される。したがって防除としては食物連鎖の鎖を断ち切り、環境抵抗を最大にすることが最も効果的である。
昆虫コントロールプログラムを中心に、医薬品工場での昆虫管理の基本的な概念について解説する。
昆虫の管理を自主管理で行うためには、昆虫管理の運用組織が必要である。特に、混入や汚染の危険性がないように昆虫を管理下に置くためには、検討会を軸として確実にPDCAサイクルをまわせる形で運用していく必要がある。ここでは、組織を構成するメンバーやその社内的な位置付けも重要な要素であるし、また毎回のモニタリング結果からどのようなアクションを取っていくかといった運用の方法も非常に重要である。管理基準をオーバーしたときには、直ちに是正措置をとって基準値内に戻すためのアクションプランを整備しておくことが必要である。
昆虫管理の実務は防虫担当者を中心に進められるが、そうした活動が着実に成果に結びつくためには、工場の全ての構成員がそれぞれの立場に応じた形で昆虫管理の活動に関わる必要がある。つまり、管理者層や一般の従業員にも、それぞれの担うべき役割に応じた昆虫管理の教育が必要である。階層別に求められる昆虫管理に関する教育の内容とそのプログラムを明確にすることが重要である。
殺虫剤に頼らず、レスケミカルで昆虫管理を進めるためには、生態学的なアプローチに基づく現状の把握と、それを基礎とした迅速なPDCAサイクルが不可欠であるが、この鍵となるのは組織としての力量の向上、すなわち昆虫管理のための組織運用と昆虫管理教育であるといえる。
殺虫剤による昆虫の防除は、一時的な効果しか得られない。医薬品の製造環境においては、薬剤が届きにくい塵埃中や壁の中の隙間などが昆虫の主要な生息場所である。また内部発生昆虫の多くは同時に様々な発育段階の個体が生息しているため、薬剤が効きにくい卵期の個体が生残しやすいという現象も起こる。昆虫の発生に適した環境条件(生息域:ハビタット)そのものには大きな変更がないため、再発生の可能性は高く、結果として繰り返し殺虫剤を使用する結果になる恐れがある。
対処療法的ではなく根本治療をできるかどうかが、長期的に昆虫個体群を制御していくための鍵となる。このためには、生態学的なアプローチによる防除計画の作成が不可欠である。昆虫が捕獲された場合は、後追い調査によりその原因と状況を突き止め、対象となる昆虫の生理・生態や製造環境における発生特性を考慮して、防除計画を設計する。また、年間の個体群動態を把握して、予防的な管理体制の精度を年々向上させていくことも重要である。
レスケミカルで昆虫を制御するためには、生息の要因となるハビタットを撹乱するとともに、その状態を維持、継続する管理プログラムが不可欠である。具体的な事例も含めて解説する。
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