第102回EQMセミナー 『生態学的アプローチとレスケミカルによる 昆虫個体群の制御』

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EQMセミナー情報EQM Seminar Information

医薬品・医療機器・食品工場対象

第102回EQMセミナー
『生態学的アプローチとレスケミカルによる昆虫個体群の制御』
  医薬品・医療機器工場では、「効果的かつ安全な昆虫コントロールプログラム」が求められています。昆虫による微生物汚染や混入を防止するとともに、万が一混入が発生した場合でもそれが極めて限定的な現象であり、日常的には混入がまず起こらないような状態で管理されていることを説明できる必要があります。このためには、モニタリングによりプログラムの有効性を常に検証することと、昆虫が捕獲された場合には「生態学的アプローチ」による防除計画を作成、実行できることが重要です。 昆虫管理に関連する動きとして、今年5月29日から食品の残留農薬基準にポジティブリスト制度が導入されます。加工食品を含む全ての食品を対象として、基準が設定されていない農薬等が一定量(0.01ppm)以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度です。また欧米では、近年農薬・殺虫剤による健康リスクの再評価が精力的に進められており、これに基づく新たな規制強化が矢継ぎ早に出されてきています。工場の昆虫管理においても殺虫剤に頼らない「レスケミカル」が重要な要素であり、このためにも生態学的アプローチは不可欠です。

  本セミナーでは、「生態学的アプローチ」「レスケミカル」による昆虫管理の考え方と、実現のための運用方法について解説します。現状の昆虫管理の見直しや強化を検討されている方に最適なセミナーです。ご参加をお待ちしております。 

医薬品・医療機器工場の昆虫管理の見直し・強化を検討されている衛生管理責任者、品質保証担当者、防虫管理責任者の方に最適な内容となっております。ぜひ、ご参加ください。

2006年7月25日(火):東京会場
2006年7月28日(金):大阪会場

 
13:00~16:45
会費:¥20,000-

EQM セミナー スケジュールEQM Seminar Schedule

  時間 内容 講師
1 13:00~14:10 医薬品工場における昆虫管理の概念
    ~生態学的アプローチの重要性~
谷    壽一
2 14:10~15:20 レスケミカルを実現するための組織運用と昆虫管理教育 伊藤 壽康
3 15:35~16:45 レスケミカルによる昆虫制御技法 伊藤 壽康(東京)
岡本 美佐子(大阪)

講演要旨Abstract Of Lecture

1)医薬品工場における昆虫管理の概念~生態学的アプローチの重要性~

  昆虫の管理は自主管理が基本である。まず、妥当性のある防虫計画を立てることが重要である。しかし防虫管理の計画が、モニタリングと殺虫剤散布だけであることもある。
  医薬品工場における昆虫管理で最も大切なことは、昆虫が発生したときに個体群生態学に基づくアプローチによる防除計画が可能かどうかということである。昆虫相調査や定期的なモニタリングの結果は、あくまでその時点でそこに昆虫類が生息していたという事実を示すだけであり、本来知りたい情報は混入などのリスクがあるのかということである。つまり昆虫が捕獲されたときにはその後の後追い調査が重要であり、その個体がどこから、どのような状況で、どのような要因によって捕獲されたのかということを追究してこそ、生態学的なアプローチによる防除計画の作成が可能となる。
  防除に当たっては、食物連鎖やその種の生活史を十分把握したうえで実行しなければ効果を得ることはできない。医薬品の製造環境では昆虫相は単純で塵埃中の有機物や真菌を食べているものとその捕食者で構成される。したがって防除としては食物連鎖の鎖を断ち切り、環境抵抗を最大にすることが最も効果的である。
   昆虫コントロールプログラムを中心に、医薬品工場での昆虫管理の基本的な概念について解説する。

2)レスケミカルを実現するための組織運用と昆虫管理教育

  昆虫の管理を自主管理で行うためには、昆虫管理の運用組織が必要である。特に、混入や汚染の危険性がないように昆虫を管理下に置くためには、検討会を軸として確実にPDCAサイクルをまわせる形で運用していく必要がある。ここでは、組織を構成するメンバーやその社内的な位置付けも重要な要素であるし、また毎回のモニタリング結果からどのようなアクションを取っていくかといった運用の方法も非常に重要である。管理基準をオーバーしたときには、直ちに是正措置をとって基準値内に戻すためのアクションプランを整備しておくことが必要である。
  昆虫管理の実務は防虫担当者を中心に進められるが、そうした活動が着実に成果に結びつくためには、工場の全ての構成員がそれぞれの立場に応じた形で昆虫管理の活動に関わる必要がある。つまり、管理者層や一般の従業員にも、それぞれの担うべき役割に応じた昆虫管理の教育が必要である。階層別に求められる昆虫管理に関する教育の内容とそのプログラムを明確にすることが重要である。
  殺虫剤に頼らず、レスケミカルで昆虫管理を進めるためには、生態学的なアプローチに基づく現状の把握と、それを基礎とした迅速なPDCAサイクルが不可欠であるが、この鍵となるのは組織としての力量の向上、すなわち昆虫管理のための組織運用と昆虫管理教育であるといえる。

3)レスケミカルによる昆虫制御技法

   殺虫剤による昆虫の防除は、一時的な効果しか得られない。医薬品の製造環境においては、薬剤が届きにくい塵埃中や壁の中の隙間などが昆虫の主要な生息場所である。また内部発生昆虫の多くは同時に様々な発育段階の個体が生息しているため、薬剤が効きにくい卵期の個体が生残しやすいという現象も起こる。昆虫の発生に適した環境条件(生息域:ハビタット)そのものには大きな変更がないため、再発生の可能性は高く、結果として繰り返し殺虫剤を使用する結果になる恐れがある。
   対処療法的ではなく根本治療をできるかどうかが、長期的に昆虫個体群を制御していくための鍵となる。このためには、生態学的なアプローチによる防除計画の作成が不可欠である。昆虫が捕獲された場合は、後追い調査によりその原因と状況を突き止め、対象となる昆虫の生理・生態や製造環境における発生特性を考慮して、防除計画を設計する。また、年間の個体群動態を把握して、予防的な管理体制の精度を年々向上させていくことも重要である。
   レスケミカルで昆虫を制御するためには、生息の要因となるハビタットを撹乱するとともに、その状態を維持、継続する管理プログラムが不可欠である。具体的な事例も含めて解説する。


注* 当社と同業種、コンサルタント・個人の方のご参加はお断りしておりますので、予めご了承ください。