【環境品質マネジメント】私たちは、環境管理技術を提供し、健全・安全な食品・医薬品づくりと安全な医療環境づくりに貢献します。
第118回EQMセミナー 『生態学的アプローチによる昆虫個体群の制御－食物連鎖と洗浄殺菌－』
EQMセミナー情報EQM Seminar Information
医薬品・医療機器・再生医療等製品・医薬部外品・化粧品工場対象
生態学的アプローチによる昆虫個体群の制御
－食物連鎖と洗浄殺菌－
昆虫管理に関連する動きとして、2006年5月29日から食品の残留農薬基準にポジティブリスト制度が導入されました。加工食品を含む全ての食品を対象として、基準が設定されていない農薬等が一定量（0.01ppm）以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度です。また欧米では、近年農薬・殺虫剤による健康リスクの再評価が精力的に進められており、これに基づく新たな規制強化が矢継ぎ早に出されてきています。工場の昆虫管理においても殺虫剤に頼らない「レスケミカル」が重要な要素であり、このためにも生態学的アプローチは不可欠です。同時に、清浄化技術としても、過度に薬剤を使用することなく、昆虫類の栄養源となる有機物や真菌類の除去を目指した手技手法の確立が必要です。
本セミナーでは、「生態学的アプローチ」「レスケミカル」による昆虫管理と洗浄殺菌技術の考え方と、実現のための運用方法について解説します。現状の昆虫管理の見直しや強化を検討されている方に最適なセミナーです。ご参加をお待ちしております。
医薬品・医療機器工場の昆虫管理や製造衛生管理の見直し・強化を検討されている衛生管理責任者、品質保証担当者、防虫管理責任者の方に最適な内容となっております。
ぜひ、ご参加ください。
2007年11月13日（火） 東京会場
本社常設セミナールーム（JR線･都営新宿線･東京メトロ丸の内線 新宿駅）
2007年11月15日（木） 大阪会場
千里ライフサイエンスセンター（北大阪急行 千里中央駅）
10：00～16：45
会費：¥35,000-
EQM セミナー スケジュールEQM Seminar Schedule
| 時間 | 内容 | 講師 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 10:00～12:00 | 医薬品工場における昆虫管理の概念 ～生態学的アプローチの重要性～ |
谷 壽一 |
| 2 | 13:00～13:30 | レスケミカルの必要性 ～ケミカルハザードをめぐる内外の動向～ |
伊藤 壽康 |
| 3 | 13:30～14:20 | レスケミカルを実現するための組織運用と昆虫管理教育 | |
| 4 | 14:35～15:55 | レスケミカルによる昆虫制御技法 | 伊藤 壽康(東京) 岡本 美佐子(大阪) |
| 5 | 16:00～16:45 | クリーンルームにおける洗浄・殺菌技術 | 鳴海 徹 |
講演要旨Abstract Of Lecture
1）医薬品工場における昆虫管理の概念 ～生態学的アプローチの重要性～
昆虫の管理は自主管理が基本である。まず、妥当性のある防虫計画を立てることが重要である。しかし防虫管理の計画が、モニタリングと殺虫剤散布だけであることもある。
医薬品工場における昆虫管理で最も大切なことは、昆虫が発生したときに個体群生態学に基づくアプローチによる防除計画が可能かどうかということである。昆虫相調査や定期的なモニタリングの結果は、あくまでその時点でそこに昆虫類が生息していたという事実を示すだけであり、本来知りたい情報は混入などのリスクがあるのかということである。つまり昆虫が捕獲されたときにはその後の後追い調査が重要であり、その個体がどこから、どのような状況で、どのような要因によって捕獲されたのかということを追究してこそ、生態学的なアプローチによる防除計画の作成が可能となる。
防除に当たっては、食物連鎖やその種の生活史を十分把握したうえで実行しなければ効果を得ることはできない。医薬品の製造環境では昆虫相は単純で塵埃中の有機物や真菌を食べているものとその捕食者で構成される。したがって防除としては食物連鎖の鎖を断ち切り、環境抵抗を最大にすることが最も効果的である。 昆虫コントロールプログラムを中心に、医薬品工場での昆虫管理の基本的な概念について解説する。
2）レスケミカルの必要性 ～ケミカルハザードをめぐる内外の動向～
国内では、2006年5月29日、食品中に残留する農薬等に関して「ポジティブリスト制度」が導入された。この背景には子供たちの生命環境を安全に守り、健康を保証しようという国際的な動きがある。海外では、特に1990年代以降、農薬や化学物質に対する多くの取り組みが進められている。1997年の「マイアミ宣言」（子供の環境保健に関する8カ国の環境リーダーの宣言：1997年G8環境大臣会合）は、「子供が環境中の有害物の著しい脅威に直面している」として各国に必要な施策を進めるよう求めた。これとあいまって、アメリカや欧州では農薬の安全基準の再評価が精力的に進められている。特に有機リン系殺虫剤は優先的に見直しが行なわれ、日本では現在も使用されている数種の薬剤が実質的に市場から排除されてきた。直近では、2007年6月にEUで施行された「REACH規制」がある。「人の健康および環境の保護」を目的として、域内に流通する3万種類以上の化学物質のリスク評価や管理の強化を進めている。
「レスケミカル」は、国際的には環境保護と呼応して後戻りのできない奔流であり、人々の健康に寄与する製品を供給する事業者にとってCSRの欠くことのできない１要素である。工場の昆虫管理で使用される防疫用殺虫剤の問題点も含めて解説し、レスケミカルの必要性について説明する。
3）レスケミカルを実現するための組織運用と昆虫管理教育
昆虫の管理を自主管理で行うためには、昆虫管理の運用組織が必要である。特に、混入や汚染の危険性がないように昆虫を管理下に置くためには、検討会を軸として確実にPDCAサイクルをまわせる形で運用していく必要がある。ここでは、組織を構成するメンバーやその社内的な位置付けも重要な要素であるし、また毎回のモニタリング結果からどのようなアクションを取っていくかといった運用の方法も非常に重要である。管理基準をオーバーしたときには、直ちに是正措置をとって基準値内に戻すためのアクションプランを整備しておくことが必要である。
昆虫管理の実務は防虫担当者を中心に進められるが、そうした活動が着実に成果に結びつくためには、工場の全ての構成員がそれぞれの立場に応じた形で昆虫管理の活動に関わる必要がある。つまり、管理者層や一般の従業員にも、それぞれの担うべき役割に応じた昆虫管理の教育が必要である。階層別に求められる昆虫管理に関する教育の内容とそのプログラムを明確にすることが重要である。
殺虫剤に頼らず、レスケミカルで昆虫管理を進めるためには、生態学的なアプローチに基づく現状の把握と、それを基礎とした迅速なPDCAサイクルが不可欠であるが、この鍵となるのは組織としての力量の向上、すなわち昆虫管理のための組織運用と昆虫管理教育であるといえる。
4）レスケミカルによる昆虫制御技法
殺虫剤による昆虫の防除は、一時的な効果しか得られない。医薬品の製造環境においては、薬剤が届きにくい塵埃中や壁の中の隙間などが昆虫の主要な生息場所である。また内部発生昆虫の多くは同時に様々な発育段階の個体が生息しているため、薬剤が効きにくい卵期の個体が生残しやすいという現象も起こる。昆虫の発生に適した環境条件（生息域：ハビタット）そのものには大きな変更がないため、再発生の可能性は高く、結果として繰り返し殺虫剤を使用する結果になる恐れがある。
対処療法的ではなく根本治療をできるかどうかが、長期的に昆虫個体群を制御していくための鍵となる。このためには、生態学的なアプローチによる防除計画の作成が不可欠である。昆虫が捕獲された場合は、後追い調査によりその原因と状況を突き止め、対象となる昆虫の生理・生態や製造環境における発生特性を考慮して、防除計画を設計する。また、年間の個体群動態を把握して、予防的な管理体制の精度を年々向上させていくことも重要である。
レスケミカルで昆虫を制御するためには、生息の要因となるハビタットを撹乱するとともに、その状態を維持、継続する管理プログラムが不可欠である。具体的な事例も含めて解説する。
5）クリーンルームにおける洗浄・殺菌技術
医薬品工場のクリーンルームでは、微生物を対象とした環境管理が要求される。適切な環境管理は昆虫類の栄養源となりうる真菌類の除去や慢性的な最近汚染を防ぐ上でも重要な項目である。このためには、洗浄と殺菌の基本「サニテーション」について理解を深め、過度に薬剤に頼るのではなく効果的な汚染除去を現場で実現していくことが必要となる。薬剤の知識や効果、正しい用具の使用方法、慢性的に汚染が蓄積するポイントなど、洗浄・殺菌に関する基本的項目について説明する。
注* 当社と同業種、コンサルタント・個人の方のご参加はお断りしておりますので、予めご了承ください。