第122-2回EQMセミナー 『殺虫剤に頼らない昆虫管理の実現』

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EQMセミナー情報EQM Seminar Information

食品製造施設・食品流通対象

第122-2回EQMセミナー
殺虫剤に頼らない昆虫管理の実現
  食品製造施設は食品の安全性を保証するためにHACCPを導入されています。カナダでは殺虫剤はケミカルハザードとして管理され許容量以上であれば回収されますが,昆虫は人体に対して危害はなく拡大被害がない限り回収の対象になっていません。
  農作物の殺虫剤の安全性については休薬期間が重要で,カナダではこれをCCPとしています。一方,食品製造施設では休薬期間がありません。そのために施設内で使用する場合はどのように汚染を防止するか,下記3項目を含めてSOPを定めて管理することが必要です。

  ・使用している殺虫剤の有効成分の種類と安全性を評価していますか。
  ・殺虫剤の汚染防止と残留は確認していますか。
  ・殺虫剤は必要でしょうか。

  防虫対策の立案は生態学的アプローチに基づいて行なうべきであり,施設内で発生する昆虫は食物連鎖を絶つことにより恒久的な対策が取れます。殺虫施工が必要な場合,施設内では殺虫剤ではなく高温水や洗剤を用いて洗浄することにより汚れと昆虫を同時に除去する方法が有効です。まず餌をなくすこと,そして3S,洗浄などで大半の昆虫は制御できます。最も大切なのは昆虫が嫌う環境条件を整えることで,これを物理的操作といいます。光源や気流による行動的操作も有効です。
   昆虫管理は農業分野で進歩し,現在はIPMが導入されています。製造施設も同様に生態学に基づいたコントロールプログラムを作成し,モニタリングによってこのプログラムの有効性を評価する仕組みを構築することが大切です。今回は昆虫類コントロールプログラムについてご紹介いたします。
 
2008年7月15日(火)東京会場
2008年7月18日(金)大阪会場

時間:13:00~16:45
会費:¥30,000-

EQM セミナー スケジュールEQM Seminar Schedule

  時間 内容 講師
1 10:00~11:00 食品製造施設における昆虫管理の基本的な考え方 谷    壽一
2 11:00~12:15 製造施設で使用される防疫用殺虫剤の基礎知識と問題点
~海外の殺虫剤規制の動向・殺虫剤の基礎知識・問題点~
伊藤 壽康
3 13:15~15:00 殺虫剤に頼らない具体的な管理手法
  その1 昆虫の生態学的側面からのアプローチ
伊藤 壽康(東京)
尾池 泰英(大阪)
4 15:15~16:45 殺虫剤に頼らない具体的な管理手法
  その2 清掃と洗浄を中心とした昆虫管理手法と実例
津田 訓範

講演要旨Abstract Of Lecture

1)食品製造施設における昆虫管理の基本的な考え方

  昆虫管理が最も進んでいるのは農業分野で総合的害虫管理(IPM)と呼ばれ、定義は「あらゆる適切な技術を相互に矛盾しない形で使用し、経済的被害を生じるレベル以下に害虫個体群を減少させ,かつその低いレベルに維持するための害虫管理システムである。(FAO,1965年)」と述べられている。
  総合的害虫管理における重要な概念には、①複数の防除法の合理的統合、②経済的被害許容水準(EIL)、③害虫個体群管理システムがあげられる。
  現在では農薬の残留などの問題から減農薬や合成殺虫剤を使用しない有機農業、また、北米などでは遺伝子組み換えによる耐虫性品種のとうもろこし、大豆、キャノーラ、綿花などが作付けされ農薬の使用が減少している。
  総合的害虫管理(IPM)は製造施設内の昆虫管理とは異なる点もあるが共通する事項も多い。防除において重要なことは生態学的見地からの防除計画の立案であり、製造施設での昆虫管理の概念である「コントロールプログラム」について述べる。

2)食品製造施設で使用される防疫用殺虫剤の基礎知識と問題点
~ 海外の殺虫剤規制の動向も踏まえて ~

  製造施設で昆虫防除に使用される「防疫用殺虫剤」は、ほとんどが農薬と同じ有効成分を使用している。先般導入された「ポジティブリスト制度」では、残留農薬基準の規制対象が全ての加工食品に拡大されたが、ここでも原則的には原材料段階での管理が中心である。製造施設で使用する「防疫用殺虫剤」に関しては、多くの場合、製品の残留農薬に及ぼす影響について詳しく検討されていない。しかし現実には、加工や包装工程で使用した薬剤成分が製品から検出される事例があり、一部には残留農薬基準を超える事例も現出している。製造施設での「防疫用殺虫剤」による製品汚染について、細心の注意をもって臨んでいく必要がある。   
製造施設で使用する殺虫剤の管理を進めていく上で、その基本的な知識は不可欠である。殺虫剤には多くの種類があるが、有効成分の基本構造や作用機構により数系統に類別される(有機リン系、ピレスロイド系など)。この類別を基礎として剤型や施工方法、効力や毒性等の特性を体系的に理解することで、「殺虫剤の使用基準」の構築が可能となる。
  欧米では、1990年代以降、農薬の健康リスクに関する広汎かつ精力的な再評価と残留基準の見直し、これらに基づく規制の強化が進んでいる。特に有機リン系殺虫剤が優先的に再検討されており、日本では現在も使用されているダイアジノンやジクロルボスなども、既に実質的な使用禁止となっている国もある。こうした海外での殺虫剤の規制の動向も踏まえて、製造施設で使用する防疫用殺虫剤の基礎知識と問題点について述べる。

3)殺虫剤に頼らない具体的な管理手法 その1
昆虫の生態学的側面からのアプローチ

   昆虫が基準を超えて捕獲された場合に、殺虫剤を使用する大きな理由の一つに、問題となる昆虫がどこで発生しているかが明確でない、ということが挙げられる。定位置のモニタリングは、昆虫の増加した場合に問題が生じているかを監視するためには適している。しかし、実際にどこで発生しているかということについては、より詳細な調査設計が必要である。昆虫がどこで発生しているかが明確にできない理由としては、昆虫の虫体が小さく目視で確認することが困難であること、発生している範囲が限られることが多いこと、ライトトラップで誘引しているために発生している場所から離れた場所で捕獲されていることがあること、などが挙げられる。
  捕獲されている昆虫類の生態を理解することで、餌となっている食物や発生場所を推測でき、また発生している場所を特定するためのより詳細な調査設計をすることもできる。
  本セッションでは、食品製造施設で問題となる主要な昆虫の生態や各々の発生特性、そうした生態学的な側面を基盤にした原因究明のための調査方法や制御方法について、具体的な事例を含めて解説する。

4)殺虫剤に頼らない具体的な管理手法 その2
清掃と洗浄を中心とした昆虫管理手法と実例

   昆虫の発生には、環境(温度、水)、発生場所、餌が必要である。しかし、殺虫剤では昆虫を一時的に減らすことはできるが、生息する場所、餌を確実に除去しなければ元の状態以上になる可能性が高い。特にカビや残渣を餌とする有翅チャタテ類やヒメマキムシ科、排水系統から発生するチョウバエ科、堆積粉から発生するメイガ類やシバンムシ科等の貯穀害虫などの内部発生昆虫類の多くは5Sの不備により発生する。
  清掃と洗浄は昆虫の発生原因となる餌と同時に卵、幼虫、蛹、成虫を全て除去することが可能である。安易な殺虫剤の使用ではなく原因を明確にし、根本的な解決を図る必要がある。そして予防的な定期洗浄を取り入れた昆虫管理プログラムを運用して、制御されている状態の維持を目指さなければならない。
  本セッションでは、清掃と洗浄を中心とした殺虫剤に頼らない昆虫管理手法について事例と併せて解説する。


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