第146回EQMセミナー 『昆虫類管理プログラムの構築』

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EQMセミナー情報EQM Seminar Information

医薬品・医療機器・食品工場・食品流通対象

第146回EQMセミナー
『昆虫類管理プログラムの構築』

  昆虫管理における重要なポイントは、モニタリングの結果から「いかに素早くPDCAサイクルを回し、継続的な改善を行うか」です。効果的で安全な昆虫類管理プログラムでは、これを可能にするために、モニタリング、評価と管理基準、是正措置や予防措置、防虫対策などの項目について体系的に手順書を整備していく必要があります。また、施設・設備が防虫構造になっているかどうかの確認と防虫構造基準を整備することも昆虫管理にとって重要です。

2010年12月7日(火):東京会場

10:00~16:45

EQM セミナー スケジュールEQM Seminar Schedule

  時間 内容 講師
1 10:00~11:00 IPM(昆虫類管理)プログラムの構築 谷    壽一
2 11:00~12:00 防虫構造の診断 伊藤 壽康
3 13:00~14:00 防虫上の問題点と防虫構造基準 伊藤 壽康
4  14:00~15:30 昆虫管理手順書の作成Ⅰ −モニタリングと改善の手順− 米倉 雄一
5 15:45~16:45 昆虫管理手順書の作成Ⅱ −昆虫管理文書の整備− 伊藤 壽康

講演要旨Abstract Of Lecture

1)IPM(昆虫類管理)プログラムの構築

  昆虫がクリーンルームにも生息していることは事実です。昆虫を管理下に置くとはどのような管理なのか。昆虫の管理は自主管理が基本であり、まず妥当性のある防虫計画を立てることが必要です。しかし防虫管理の計画が、モニタリングと殺虫剤散布だけということもあります。
  製造環境での昆虫管理は微生物の汚染源とならないことと、異物として混入しないように管理すること。そして、管理されていることの証明ができることです。管理とは昆虫モニタリングのデータが生かされ問題があったときに是正措置が取られ、その後予防措置が講じられて、記録が残っていることが重要です。そのためにも自主でモニタリングの同定をして改善を進める必要があります。
  IPMプログラムを開発し運用するには、問題となる昆虫の種類と生態を知り、モニタリングで発生予察をし、そのデータを有効活用して、製造環境の改善と効果確認につなげる必要があります。それらを年間のタイムテーブルに落とし込んでいく。昆虫管理で必要となる要素の全体像を確認し、基本的な進め方について紹介します。

2)防虫構造の診断

  防虫構造とは、高度清浄区域での「昆虫の侵入」と「昆虫の発生」を抑制するための基本構造です。その評価は工場自体の施設・設備の仕様や管理運用状況を把握し、昆虫の特性を理解した上で行う必要があります。屋外には多数の昆虫が生息し、そのため発生のピーク時においては負荷が高くなりますが、その期間においても管理基準を満たす構造が要求されます。防虫構造はこの機能要求を満たすかどうかが肝要であり、防虫構造の診断は機能診断となります。
  ここでは、昆虫の侵入方法と生態から防虫構造の調査技法、それらの結果からの考察について説明します。

3)防虫上の問題点と防虫構造基準

  昆虫の工場内への侵入方法には飛翔・徘徊・付着があります。飛翔及び徘徊侵入に対しては防虫機能として侵入を制御できる構造が必要となります。付着については更衣や搬入手順など管理運用面での対応が必要です。また、工場内での定着を予防するためには発生原因となる劣化や不具合の予防が必要になります。工場の新設時には予め防虫構造の機能要求を考慮して設計する必要がありますが、既設工場においては問題発生時にできるだけ早く不具合の程度と範囲を把握し、改善することが必要です。
  中でも菌食性昆虫が捕獲された場合は構造上の何らかの不具合のために真菌が大発生したものと考えられます。多くの場合気密性の高い高度清浄区域で問題が発生するために、製造空間における製品への昆虫の負荷が高くなり、混入の機会が多くなります。真菌由来の問題はリスクの高い、緊急を要する課題であるといえます。
  本セッションでは、防虫上の不具合を具体的な事例とともに説明し、予防するための防虫構造基準について解説します。

4)昆虫管理手順書の作成Ⅰ −モニタリングと改善の手順−

  昆虫管理における重要なポイントは、モニタリングの結果から「いかにして素早くPDCAサイクルのフローを回し、継続的な改善を行うか」です。したがって昆虫管理手順書の作成の第一ステップとして、まずこの「モニタリングと改善」の手順を確立する必要があります。作成のポイントは、①妥当性のあるモニタリングの設計基準(定期モニタリングと問題発生時のモニタリングの設計)、②モニタリング結果の「解析・評価」(昆虫の種類ごとの生理・生態・工場での発生特性を熟慮した「評価の基準」)、③評価結果に基づく是正措置と予防措置の手順、です。これらの内容を「対種防除指針・種類別のPDCAサイクルのフロー」を中心に構築し、関連する必要な手順書類を整備していきます。
  「昆虫モニタリングと改善」の手順の作成について、工場での各種昆虫の発生特性や事例を含めながら、実際的な内容について説明します。

5)昆虫管理手順書の作成Ⅱ −昆虫管理文書の整備−

   生体由来物としての昆虫の混入を防止し、また万が一に備えた説明能力を保有するためには、GMPの一項目として昆虫管理手順書を作成し、必要な管理記録を整備し、これらに基づく昆虫の自主管理体制を構築する必要があります。昆虫管理手順書作成の第二ステップは、製造衛生管理基準書やGMPの他の体系と関連付けながら、昆虫に関わる管理活動の全体像を構築し、これを運用することです。
  特に苦情や回収処理にあたっての判断基準や手順の整備は重要な課題であり、またこの基盤となる日常的な工程異常報告(昆虫の内部発見情報の取り扱い)などについても、昆虫管理の視点から整備していく必要があります。
  昆虫管理に必要な管理項目の体系と作成の進め方について説明するとともに、他の基準書・手順書との関連や昆虫管理の視点で追加・補強する内容等について、具体的な事例を含めながら説明します。


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