第97回EQMセミナー 『昆虫管理におけるレスケミカルの実現』

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EQMセミナー情報EQM Seminar Information

食品工場・食品流通業対象

第97回EQMセミナー
『昆虫管理におけるレスケミカルの実現』
-ポジティブリスト制度の下で必要となる基本的な考え方と管理手法-

  残留農薬の『ポジティブリスト制度』が、2006年5月29日から施行されます。加工食品を含む全ての食品を対象として、基準が設定されていない農薬等が一定量(0.01ppm)以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度です。加工食品については約40品目で基準が決められ、それ以外では「残留基準に適合した原材料を用いて製造又は加工されたものは、原則として販売等を可能とする。」という扱いになっています。しかし近年欧米では、農薬・殺虫剤による健康リスクの再評価が精力的に進められており、これに基づく新たな規制強化が矢継ぎ早に出されてきています。加工食品を含めて残留農薬に関わる安全性を保証していく必要性は、リスクマネジメントの観点からも高まってくるのは必至です。
  食品工場では、工場の昆虫防除に使用される「防疫用殺虫剤」も大きな問題です。有効成分はほとんどが農薬と同じであり、工場での汚染が製品の残留農薬に影響を及ぼす危険性について、細心の注意をもって臨んでいく必要があると考えます。従来「殺虫剤」に頼ることが多かった管理を脱却し、『レスケミカル』、更に進んで『ノンケミカル』を目指した昆虫管理を実現していく必要があるといえます。このためには、①現状を正確に把握するための調査手法、②清掃・洗浄を中心とした管理プログラム、③これらをPDCAサイクルで運用するための運営組織が必要です。
  ポジティブリスト制度の下で求められる昆虫管理の基本的な考え方と、レスケミカルを実現するための管理手法について、具体的な事例を含めて解説します。


2006年3月7日(火):東京会場
本社常設セミナールーム(JR線・都営新宿線・東京メトロ丸の内線 新宿駅)
2006年3月10日(金):大阪会場
千里ライフサイエンスセンター(北大阪急行 千里中央駅)

10:00~16:45
会費:¥20,000-

EQM セミナー スケジュールEQM Seminar Schedule

  時間 内容 講師
1 10:00~10:30 食品工場を巡る品質管理の最近の話題 林    亮介(東京)
濱田 雪義(大阪)
2 10:30~11:45 ポジティブリスト制の導入と工場で使用される防疫用殺虫剤の問題点 ~海外の殺虫剤規制の動向を踏まえて~ 伊藤 壽康
3 12:45~13:45 食品工場における昆虫管理の基本的な考え方 谷    壽一
4   レスケミカル実現の具体例  
  13:45~15:15 その1 昆虫の生態学的側面からのアプローチ 國定 勝博(東京)
尾池 泰英(大阪)
  15:30~16:45 その2 清掃・洗浄による効果と検証 辰口    誠(東京)
津田 訓範(大阪)

講演要旨Abstract Of Lecture

1)食品工場を巡る品質管理の最近の話題

  北米やヨーロッパでは、「HACCP」「ISO22000」を中心に、より実践的な食品安全、品質保証の体系作りが進められている。「Farm to Fork」「HACCP across Food Industry」、すなわち従来の枠組みを超え、フードチェーン全体を通しての横断的、総合的な食品安全の仕組みづくりが求められている。
  現在、これらの先進諸国で食品安全の最大の懸念は「ケミカルハザード」であり、その対策が急務となっている。ダイオキシン、PCB、トランス型脂肪酸、残留農薬と言ったケミカルハザードの蓄積が健康や生態系にもたらす影響が懸念され、官民一体の横断的な研究と対策が加速されている。これら先進国の事例を中心に、食品工場を巡る最近の話題を紹介したい。

2)ポジティブリスト制の導入と工場で使用される防疫用殺虫剤の問題点
~海外の殺虫剤規制の動向を踏まえて~

  海外では、近年、農薬の健康リスクに関する広汎かつ精力的な再評価と残留基準の見直し、これらに基づく規制の強化が進んでいる。例えばアメリカでは、1996年に施行された食品品質保護法に基づき、クロルピリフォスやダイアジノンなどの有機リン剤に対して、限定用途以外での使用(製造・販売も含めて)を禁止する排除計画を進めている。重要なことは、海外では、農業用も防疫用も家庭用もまとめて、健康リスクとして総合的に評価していることである。
   日本で導入されるポジティブリスト制は、加工食品も含む全ての食品が対象とされたが、現段階では農作物からの農薬の残留を中心に検討されている。しかし現実には、工場内で昆虫防除に使用される「防疫用殺虫剤」はそのほとんどが農薬と同じ化学物質であり、工場での汚染が製品の残留農薬に影響を及ぼす危険性について、細心の注意をもって臨んでいく必要がある。ポジティブリスト制度の下で問題となる工場で使用される防疫用殺虫剤について、海外の殺虫剤規制の動向を踏まえながら述べたい。
  

3)食品工場における昆虫管理の基本的な考え方

  昆虫管理が最も進んでいるのは農業の分野で総合的害虫管理(IPM)と呼ばれ、その定義は(FAO,1965年)「あらゆる適切な技術を相互に矛盾しない形で使用し、経済的被害を生じるレベル以下に害虫個体群を減少させ,かつその低いレベルに維持するための害虫管理システムである。」と述べられている。
   総合的害虫管理における重要な概念として、①複数の防除法の合理的統合、②経済的被害許容水準(EIL)、③害虫個体群管理システムが挙げられる。
   現在では農薬の残留などの問題から減農薬や合成殺虫剤を使用しない有機農業、また、北米などでは遺伝子組み換えによる耐虫性品種のとうもろこし、大豆、キャノーラ、綿花などが作付けされ農薬の使用が減少している。
   総合的害虫管理(IPM)は工場内の昆虫管理は異なる点もあるが共通する事項も多い。防除において重要なことは生態学的見地からの防除計画の立案であり、工場での昆虫管理の概念である「昆虫動態バリデーション」について述べたい。

4-1)レスケミカル実現の具体例 その1  昆虫の生態学的側面からのアプローチ

  食品工場で問題となる昆虫類は、工場内部で発生する種類と屋外で発生したものが工場内に侵入する種類とに大きく分けられる。実際に清潔区域やライン周辺で捕獲される昆虫は内部で発生する種類が多いが、その主な原因となるのは機器類の洗浄不良、結露・蒸気などによるカビの発生、清掃不足による飛散粉の堆積などである。 レスケミカルで昆虫管理を進めていく際に重要な鍵となるのは、原因究明のための調査である。対策を実施する前に原因究明のための調査を実施することで、具体的かつ効果的な対策の立案につながる。
   本セッションでは、食品工場で問題となる主要な昆虫の生態や各々の発生特性、そうした生態学的な側面を基盤にした原因究明のための調査方法や制御方法について、具体的な事例を含めて解説する。
  

4-2)レスケミカル実現の具体例 その2  清掃・洗浄による効果と検証

  カビや残渣を餌とする有翅チャタテ類やヒメマキムシ科、排水系統から発生するチョウバエ科、堆積粉から発生するメイガ類やシバンムシ科等の貯穀害虫など、工場内で発生し問題となる昆虫類の多くは5Sの不備により発生する。殺虫剤による防除はこれらの昆虫類を一時的に減少させることができても、その発生要因となるカビや残渣を除去しなければすぐ元の生息数に戻ってしまう。発生源となる箇所を明らかにして、清掃・洗浄を中心に対処する必要があるが、特に重要となるのはそれらの組み立てである。製造機器の構造、環境の状態、製品特性を考慮して残渣等が生じる要因を明確にし、適切な洗浄工程の設計や洗剤と資材の選定を行い、これを定期的な洗浄計画に落とし込む必要がある。
   本セッションでは、清掃・洗浄を中心とした昆虫の制御方法について、工場内での解決事例と併せて解説する。


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