IPM(総合的有害生物防除)の定義

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IPM(総合的有害生物防除)の定義


  農業分野では作物への被害と損害を許容できる水準に害虫の個体群を低密度に管理する手法として総合的有害生物管理(Integrated Pest Management、以下IPMという)が導入されています。
IPMの定義(FAO,1966)
  「あらゆる適切な技術手段を相互に矛盾しない形で使用し、経済的被害を生じるレベル以下に有害生物個体群を減少させ、かつその低いレベルに維持するための害虫管理システムである。」
IPMの定義(FAO,1992)
  1992年には「有害生物が存在しても被害が重要でなければ、即防除手段をとる必要はない。防除が必要とされる際には、農薬の使用を決める前に、化学的でない防除方法を検討すべきである。総合的な方法による適切な防除手段を行うべきであり、農薬はIPMの方策における最終手段として、必要とされる根拠がある場合のみ使用されるべきである。このような方策の中で、人間の健康、環境、農業体系の持続性および経済性に対する農薬の影響を十分に検討する必要がある」。と述べられています。

  IPMの定義は1992年に修正されましたがその後も修正は行われ、環境や社会へのリスク面が強調されるようになっています。
  IPMの特徴は①複数の防除法の合理的統合、②経済的被害許容水準(EIL)、③害虫個体群管理システムという3項目です。
  基本は防除対象種の生態に基づく対種防除であり、種類ごと(あるいは食性ごと)に安全なあらゆる防除手段を相互に矛盾しない形で組み合わせて防除する仕組みです。また防虫コストと収益とのバランスから経済的な許容水準と要防除密度を設定し、それらを基に年間の対種防除計画を作成し害虫の個体群を低密度に管理する仕組みです。
  IPMの基本的概念は食品製造施設や医薬品製造施設でも導入すべきと考えます。

  関連情報
 ・防除手段
 ・環境抵抗と環境収容力


引用文献
1) 谷壽一・津田訓範・湯本進一, 食品製造環境・製造機械の真菌とチャタテムシ類の発生防止対策,月刊HACCP.28(2).pp.37-43.2022.