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昆虫類の環境指標性

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昆虫は環境のインジケーターInsects Are Environmental Indicators

谷壽一ほか,(2005)::昆虫動態バリデーションシリーズ
第3回 医薬品製造区域に生息する昆虫類の形態と生態,PHARM TECH JAPAN,(株)じほう,
VOL.21.No.7.p.98より引用。

  節足動物は多様性に富み、種類ごとにさまざまな環境に適応して生活する生物である。その中には工場内の製造区域という人為的な環境にも適応できる種類もいる。昆虫類は種類によって餌や生息場所が異なる。よって製造区域に均一に生息するわけではなく、それぞれの種類が特定の環境で見出される。したがって、捕獲された昆虫類の生態を熟知していれば、工場にどのような問題があるのかを推測することができる。これが昆虫類の環境指標性であり、昆虫類の生息状況が製造環境の状態、すなわちGMPの管理状態や製造環境の変化を反映することから、環境のインジケーターとして利用できる。昆虫管理を進めるために欠くことのできない概念である。 図1に工場における昆虫類の環境指標性を示す。例えば、チョウバエ科であれば幼虫が水生昆虫であり、有機物を含む汚水に生息するため排水系統の汚れの指標となる。配水管などの水系を確認し、洗浄などにより汚水を除去すれば生息できなくなる。

(1)真菌発生の指標 粘管目、噛虫目、ヒメマキムシ科、ダニ目などが真菌を餌として発生する。噛虫目が優占目となることが多いが、時にヒメマキムシ科も多発する。通常はクリーンルーム内部での発生は少ないが、餌となる真菌が天井裏・壁の中・床下等に発生すると、そこで繁殖を繰り返してクリーンルーム内部に分散する。浮遊真菌数に異常があったので調査をしたらヒメマキムシが多数いたというケースもある。真菌汚染の状況は食菌性昆虫類を調べることにより早期に発見できる。このように食菌性昆虫は環境の真菌の指標性が非常に高いといえる。

(2)室内塵の堆積の指標 コナチャタテ科、シミ科、カツオブシムシ科の幼虫と塵埃由来のダニ目が指標となる。これらの昆虫類は清掃が不適切で部屋の隅や機器・備品の下などに塵埃が堆積すると個体数が増加する。食菌性の種も含まれるが、真菌が発生したときほど増殖はしない。 部屋の内側の塵埃だけでなく、壁の中や天井裏に溜まった塵埃にこれらが発生し、クリーンルームに侵入することもある。特に古い工場では、より多くの塵埃(餌)を必要とするカツオブシムシ科の幼虫やシミ科が発生する場合がある。 このほか原料に由来するデンプンや生薬などの乾燥した動植物質が放置されていると、シバンムシ科、メイガ類などの穀物害虫が発生することがある。

(3)排水の汚れの指標 最も発生数が多いのはチョウバエ科であり、ショウジョウバエ科、ハヤトビバエ科、ノミバエ科も稀に発生することがある。チョウバエ科の場合、排水系統の汚水溜まりから発生するので、水が溜まっていないと発生はない。ショウジョウバエ科、ハヤトビバエ科、ノミバエ科も同様に排水系統から発生することがあるが、水気はあるが水が溜まっていない堆積物が発生源であるので、発生源の水分状態によって種が交代する。これにより、発生している種類でどのような汚れがあるかも推測できる。

(4)昆虫個体群の指標 真正クモ目は全て捕食性であり昆虫個体群の指標となる。一般にクモが多数捕獲されるエリアは餌となる昆虫類が相当数生息していると判断される。屋内で捕獲されるのは徘徊性の自由生活するクモで、代表的なのはチリグモ科、ユウレイグモ科、ハエトリグモ科の3種である。これらのクモは屋内に定着することができるが、屋外にも生息する。

(5)建物への侵入のしやすさの指標 昆虫の建物への侵入のしやすさは、捕獲された昆虫類のうち外周の環境から野外性と推定されたものを徘徊性昆虫、飛翔性昆虫に分け侵入率から判断する。 飛翔して侵入する昆虫類はタマバエ科、クロバネキノコバエ科、ユスリカ科などの双翅目が多く、これらの昆虫は光に誘引されることと、気流の影響により侵入することが多い。また、昆虫の大きさ、体長を測定することにより、その場所までにどの程度の隙間があるかを知ることができる。 徘徊して侵入する昆虫類は、ゲジ科、オサムシ科、タカラダニ科などが代表的で、ドア・シャッターの密閉度や外周の環境の指標となる。特にタカラダニ科は活発に動きサイズも小さく、建物の小さな隙間から侵入する。

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